上のひどい地図の「このへん」が、「萩中(はぎなか)」。
ある秋の日、わたしはそのフリマの存在を、商店街の掲示板で知ったのだ。
そう、自転車で通りかかった萩中商店街。
そこは、羽田空港の近くであるが、あまり観光客が来るような街ではない。だが「萩中公園」などがあり暮らしやすいと評判の萩中のまちで、フリマを募集しているらしい・・・。
「はぎなかいち」というフェスタが行われ、フリマもはじめて行うことにしたそうである。時期は12月と2月とのこと。参加費500円、安い!これはぜひ参加したい!
そんなわけで、12月は用事があったので、2月5日に申し込んだのである。
フリマというと、事前の注意や、ブースの広さ、販売物品の制限などについて細かく注意されることが多い。
その点をこのフリマの担当の方に問い合わせたところ・・・
>注意事項ですが一般常識からかけ離れた行為がなければと、思って
担当者のドコモメールから上のようなみじかい連絡が来て、おおらかな雰囲気が感じられた。
◆
とくにコスプレをする意識はなかったが、寒かったので、普段着の上にハロウィン用の骸骨の着ぐるみを着て、DAHONの自転車を走らせた。そういえば、このDAHONの自転車も10年前に萩中商店街の「すぎやま」さんで買ったことを思い出す。折り畳み式自転車が欲しくて、あれこれ調べた10年前。お気に入りのその自転車はギヤが故障したり部品を交換したりしながら、今もこうして走り続けている。
小径の自転車で、いざ萩中へ。
同じ大田区内、わたしの住む場所からは自転車で25分ほどの場所。
時間に余裕をもって家を出たのだが・・・
実はわたしは、第1京浜国道より南の地区に土地勘があるとはいえない。有名な七辻(7本の道路が放射する交差点)で別の道を進んでしまい、あれあれ?と思っているうちに環八に出てしまった。
七辻では、なにしろ6つも選択肢があるので、いつも迷ってしまう。川の方向に間違うよりは、環八方向に間違うほうが、マシかもしれないが・・・。
Tolmanのマウスなら、内的な認知地図を持って、正しい道を選択できたのだろう。
迷ったときの環八の写真。左に京急高架がみえる。もうすぐ糀谷駅くらいの場所。
羽田方向から春もフライトで到着する、なんて良い天気。道を間違えたぶん時間をロスしたが、やっと会場にたどり着いた。通行止めにされた萩中通りはひろびろとしており、飲食を中心に、さまざまな店舗が準備を開始していた。フリマらしきブルーシートもみえるがその数は多くなく、フリマの賑わいという感じはなかった。静かだ。外部からフリマのためにギンギンと売ろうとする人(プロ)があまり見受けられない印象である。
・・・どこが本部受付なのだろう?
・・・フリマはどこに展開すればいいのだろう?
ファミリーマートの前にいたスタッフらしき方に尋ねると「では、このへんで~。」と、ざっくりとフリマの場所を指示してくれた。
「この道路の白い点が、区切りですか?」
「いえ、とくに大きさに決まりはないので、お好きな広さで行ってください」
・・・なんと!
広さは自在、売るものも売り方も「常識の範囲内で」、そんな「はぎなかいち」フリマは、とてもおおらかなフリマのようであった。
2月の日差しは春の訪れを予告するように強く、気温もほどほどに上昇し、また風も弱く、フリマには最適のコンディションであった。
自分もそれなりに準備はできており、忘れものなどはしなかった。
右隣は、フリマ慣れしている元気な女性。通行人に積極的に声をかけながら衣類などを売っていた。あとで会話したところによると、12月の高円寺・北中夜市にも出したそうで、高円寺はおしゃれな外見の若者が多いこと、こちらは高齢者が多いですねと、そんな印象を話してくれた。
たぶん高円寺が特別に若いだけで、この大田区のように高齢者が多いのが普通だろうと、そんな会話を交わした。
(撮影:どこかの未就学児)
左隣は、お花屋さん。さまざまなお花、春を予感させる色とりどりの花束のほか、無料でもっていってよさそうな花たちもみえた。気前がよく、おおらかである。エプロンの店員さんがお花を主役にするように、静かにたたずんでいた。
少し向こうから「日本トップリーグのハンドボールチームです!選手も来てくれています!」という声も聞こえた。プロハンドボール選手にボールを投げられるハンドボールチャレンジを1回100円で行っているようである。
大田区を拠点とするプロハンドボールチームがあることを初めて知った。
スポーツ選手も、試合で良い成績を残すだけでなく、こうしてファンサービスをしてゆく必要があるのだなと感じた。
さて、わたしのブース。
10円コーナー、50円コーナー、ちょっといいもの数点。
それに加えて「あなたの言葉で唄をつくります/CD購入者無料or投げ銭」の看板を出した。
10円コーナーは、いつもとても人気があるのだが、今回はそれほど盛り上がらなかった。それなりの人通りのなか、まったく売れないわけではなかったが、購買に関してオーディエンスが慎重であり、安いからといって購入する雰囲気ではなかった。
フリマがよく行われる大規模な会場では、プロのような鋭い目つきの方が朝方によく現れるものだが、このフリマではそのような方は・・・1名いたかな?という程度であった。フリマのブース数も少なく、観光客が訪れる街でもない、はぎなか、ほどほどに賑わう人々の足、杖、シルバーカー、車いす、それは近隣に住む、いつもの住民たち。車いすを押しながら、シルバーカーを押しながら、杖をつきながら、わたしのブルーシートの上の物品をしずかに見やってゆく。わずかながら高倉健の本や、ためしてガッテン!の本が売れる。1冊50円。
ジャンクなカメラボディ(SONYのNEX-3)を置いていたが、少年がそのカメラに関心を示した。わたしが使っているレンズ、SDカード、バッテリーを入れて、「撮ってもいいよ」と渡すと、大喜びであたりの風景や友達のドアップを撮影してまわった。以下の写真はそのうちの1枚である。
(撮影:どこかの未就学児)
話をきくと、まだ小学校に上がっていないとのこと。未就学児というのは、こんなにちゃんと会話ができて、すぐにミラーレス1眼の撮影ができるほど理解力があるものなのか・・・。
そんなふうに時間は過ぎゆき、遠くにあった日差しが骸骨の着ぐるみにも届き、また通り過ぎていった。
日時計の針は進みが速い。
どこかで飛行機が離陸する。
ふと見上げると、No Way Maniacsの森圭史さんがいた。ニット帽をかぶって、にやりとしている。
フリマ主催だけでなく個性豊かな絵描きさんでもあり、以下でグッズ販売もしている。
濃いな・・・。
森さんは、デザフェスにライブペイントで出られるらしいが、わたしもライブで出演するという話をし、「西館と南館はちょっと遠いですよね・・・」と言ったら、「西館と南館は中でつながってるんですよ」ということを教えてくれた、へえ(←方向音痴)。
個性豊かな森さんのライブペイントは遠くからでも目立つだろうなと思う・・・わたしも5月21日にライブ出演するが、その前に観に行こうと思う。
また、7月9日にNO WAY MANIACS(アーティストの展示即売会)が蒲田アプリコで行われる予定とのことで、古物商ブースを出そうと思う。
身近なところにもアートの楽しみがある。
ああ、楽しみ。
◆
フリマも中盤にさしかかり、ファミチキなどを頬張っていたころ、別の知人が通りがかった。
懐かしさに会話の花も咲き・・・
「この、”唄作り”って気になります。」
・・・なんと唄作りのオーダーをしてくれた。
お題は「青空と愛と光」。
その場で、こんな曲を書いた。
「あなたの言葉で唄を作ります」
— Kamata TERAKOYA(公認心理師/詩人のいる小屋) (@kamataterakoya) 2023年2月5日
という看板を出していましたら
「”青空と愛と光”で唄を作ってください」
こんなオーダーをいただき、急ごしらえで作りました。
素敵な体験をありがとうございました。 https://t.co/ukocUeeUxU pic.twitter.com/uOIxbydz29
投げ銭までいただいてしまった。ありがとうございます。
それにしても、「路上パソコン弾き/路上DTM唄づくり」、案外ちゃんとオーダーがあることに気づかれる。パソコンのバッテリーが無くなり終了したが、バッテリーも用意して、この「ストリートDTM」、ぜひ極めたい。
そんな感じで、本当は17時までであったが、パソコンのバッテリーが終わったので16時半ごろに失礼した。全体として少なめの売り上げは唄作りの投げ銭の割合が大きく、ほかの商品はあまり売れず・・・。
出展料が安いので、なんとか黒字にはなった。だが、50円だろうと10円だろうと、もう「もの」は売れないのだなと実感した今日のフリマであった。
プロが少なく、いつものお店がならぶ「はぎなかいち」。何らかの特別な場というよりは日常の延長としてのフリマという印象が残り、いかにも大田区の住宅地らしいといえるかもしれない。
大田区を離れることばかり考えていた年末年始だっただけに(←いきなり何だ)、大田区の盛り上げに少しは貢献できたようで嬉しく思う「はぎなかいち」のフリーなフリマ。
行う時間も長く、出展料も現時点の特別価格かもしれないがお安く(500円)、行う側としてはとても気持ちの良いフリマ。
大田区民の自分にとっても、身近な宝ものがひとつ増えたような、そんなおおらかなフリマだった。
5月にも予定されているようで、もしタイミングがあえば参加したい。
◆松岡宮からのお知らせ
久しぶりに短めのライブ出演させていただきます。
2023年3月6日(月)15分ライブ@原宿クロコダイル
イベント名:「ウクレレエイド」
ウクレレ奏者中心で、ひとくみ15分ずつの、のんびりイベントです。
場所:原宿クロコダイル
チャージ:500円+オーダー
秋のデザフェスライブの再演で、15分ライブいたします。
たのしみ。
2023年5月21日(日)ライブ@デザフェス
デザインフェスタ パフォーマンスステージ
(大きいセンターステージでなく、小さめの、室内のほうです)
場所はビックサイト。鉄道を柱に、新たな演目で臨みます。
2023年7月9日(日)
NO WAY MANIACS(アート展示即売会/古物商)
文中でも説明ありますが、森圭史さん主催の販売会。
蒲田アプリコにて。
古物商ブースだします。宮崎県のお宝など、不思議にラテンなお宝を自分の作品とともに展示販売します。
まだ申し込んでいませんが・・・。
物品や作品を介した淡い出会い。道端でものを売るのは、とても楽しい。
路上販売の悲哀を描いた「東京フリマ日記」もよろしくお願いいたします。
記事はこれで終わりです。以下は投げ銭です。