松岡宮のブログ

詩でうた作り

二度目の串間の旅のこと(1)【閲覧注意/猫死体】

 

危険」と書こうとして字を間違える・・・。

 

 

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【これまでのあらすじ】

 

独身だった叔父が亡くなり、なぜかわたしが宮崎県串間市の父の実家の後始末をすることになった。

そこには、壊れそうな「母屋」と、そこまで壊れそうではないものの中は荒れ放題の「離れ」があった。

 

第1回の旅のハイライトは、母屋の押し入れにかわいいネコちゃんの亡骸を見つけたことであった。

 

それがあまりに美しく、東京に持って帰りたいと思った・・・そう、叔父の骨をゆうパックで送ったみたいに。

 

・・・おお、なんと美しいネコだ、これはぜひ壁に飾りたいものだ(by 機械伯爵Miya)。

 

猫をお迎えにゆく旅の、始まり、はじまり。

 

【あらすじ おわり】

 

以下の記事の続きです。

ekiin.hatenablog.com

 

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・・・猫の亡骸を持ち帰りたい・・・ッ!

 

その計画を事務所の「小さな発表会」で述べたところ、猫を愛し、猫の気持ちがよくわかり、時々猫になる詩友(かつ俳優)のおもとなほさんが、こんなことを言ってくれた・・・

 

・・・ネコはその場で埋葬されたがってるのよ・・・

 

と。

 

twitter.com

 

言われてみればそうだ。わたしはどうしてあんなに猫の亡骸にこだわってしまったのだろう・・・。

 

あの1回目の串間の旅、興奮と果てしない片づけの疲労のさなか、立ち眩みの陽光に包まれ、押し入れのなかに見いだされたその財宝はあまりに美しくみえてしまった。それで、われを失ってしまった。欲望の棒が伸びてしまった。末っ子のわたしの寄る辺なさ。猫好きだった幼少期の自分が大人になった今の自分を支配しはじめ、子供らしい判断を行う。1回目の旅、あれを発見したとき、たしかにあの猫は生き物の死体にはみえず、コチコチと石のように硬く、コンクリートで固められた作りものにしか見えなかった。それならば手元に置きたいという気持ちはずっと残っていたが・・・もし亡骸であったなら、埋葬してさしあげよう。

 

そんな思いを抱えて家に向かった2回めの串間。

 

屋根に穴のあいた母屋で、飾っておいた優勝カップたちは不釣り合いなほど金色に光っており、去ったときと同じ輝きを放っていた。

 

しかし、前回、あんなに美しい人形のようにみえた「ネコ形の何か」には、明らかな腐敗がみられた。

 

 

以下、閲覧注意。

 

 

 

 


・・・あれ、こんなに死体っぽかったかしら?

 

・・・やっぱり、もともと生きていた猫だったようだ、この物体は。

・・・埋葬してあげなきゃ。

 

時が流れて庭木のありようも変化していることに気づいた。そして自分の気持ちと風景がリンクしていることにも気づいた。いや、自分の気持ちだけではない。風景は、さまざまにその姿と意味を変え、わたしと交流をしようとしているように感じられた。つまり、この家に存在しこれからわたしが出会ってゆく予定のものは、実は固定しておらず、わたしの心情や動向次第でそれは刻々と変わってゆくように思われたのだ。

 

わたしが疲れていればわたしを楽しませるためのオモチャがおかれ、体力を回復すればそれなりのモノが目の前に現れるというふうに。

 

その考えはいかにも非科学的であるが、そのときのわたしには本当にそんなふうに感じられたのだ。そしてそれは、誰かからのギフトであるのだ。コミュニケーションといってもいいのかもしれない。誰のギフトであるかはわからないが、ともかく誰かが何かを自分に伝えようとして、順次、押し入れや棚にわたし宛の品物を置いてくれているのだと・・・そう思うことで、この理不尽で体力もお金も費やす片づけを納得させようとしていた。

 

崩壊寸前の母屋には、キャットフードの袋が置かれていた。ずいぶん古いものだ。ほんの少し中身が残っていたので、さっきの猫が餓死したわけではないであろうことに、少し、ほっとした。

 

 

母屋のほうのちゃぶ台には、お皿やカップ、お箸やスプーンのほか、スーパーのお惣菜のトレーの山、まだ中身の入っている紙パックの日本酒や、お酒が少し入ったグラスもあった。灰皿には吸い殻も残っており、畳や布団にはタバコで焦げた跡もあった。独身の叔父が飲酒喫煙しながら猫と暮らしていたことがうかがい知れ、しんみりとした・・・

 

しかし、次の瞬間、紙ごみや木くずでいっぱいのちゃぶ台の下に、見つけてしまった。

 

 

もう一匹、猫の亡骸を見つけてしまった・・・。

 

 

閲覧注意・・・。

 

 

 

 

・・・これはもう、なんというか、骨だな・・・

・・・どうもこの家には、猫が数多く出入りしていたらしい・・・

いや、今もか?

 

あわてて360度見渡す。

もしかしたらここは、猫だらけの家なのではないか?

もしや、ここは、生きている猫と死んでいる猫でいっぱいの母屋・・・?

 

「ともかく供養しないといけない。」

誰かがわたしにそう言って促す。

「はい!がんばりますぅ!」

誰からも頼りにされることが無かった末っ子が、実力以上のタスクを行おうと気張る。

 

何しろいま、この空間で生きているヒトは、わたししかいないのだから・・・。

 

そこで、さきほどのミイラと、この亡骸を、お盆のようなものに並べて載せ、落ちていた菊の花も添えた。

 

閲覧注意。

 

 

やすらかに・・・・。

 

 

ひとまず仏壇のあたりにお盆を置き、手を合わせようと仏壇の前にまわった・・・

 

その時!

 

自分の体が落ちた!

 

 

 

? ? ?

 

・・・いったい何が起きたのか、すぐにはわからなかった。

 

要するに畳の床が抜けたのであった。

 

1階だったのでケガはなかったが、家の床が落ちることがあるのかと・・・精神的に衝撃を受けた。

床下まで突き抜けた自分の身が気づけば両手をあげてバンザイをしている。背の低い自分の腰から下が何か別のものに包まれている。

あわてて横に走る支柱に重心をかけ、よいしょっと上がった。自分の髪やコートは、何かよくわからない畳の屑やホコリやチリに包まれていた。

 


しみじみ眺めると、壊れかけのこの母屋の、とくに仏壇周辺の畳の傷みがひどい。畳に暖房器具などが穴をあけていた・・・そしてわたしの体重がまたひとつ穴を増やしてしまった。

 

だが、このときは怖さ半分、好奇心半分でもあった。

奥の押し入れに何が入っているかをまだチェックしていないので、とくに父や祖父母、先祖につながるような資料があれば取っておきたいと思い、今度は落ちないように横に組まれた柱のラインをおそるおそる伝って、奥まで行った。平均台の競技をしているようだ。

 

 

 

奥にはよくわからない小さな空間があり(上の写真はその空間を外からみたところ)、ここにあったのはトイレかなと思ったそうではなかった。押し入れのようなところには大きな箱がいくつかあった。どうしてこの母屋にはトイレが無いのだろうと不思議に思いつつ、その箱を慎重に開けてみたところ、そこに入っていたのは、巨大な提灯と、お盆に使う灯篭であった。

 

祖父か誰かのお葬式に用いたものであろうか?とにかく巨大な提灯で、何か文字が書いてある。

 

キッチンに向かう棚にぶら下げてみた。

 

戒名のようだが、祖父の戒名とは異なっており、結局誰のための提灯であるかはわからなかった。

 

ふと思い出した。

祖父の葬式でここに来た幼い我々。わけもわからず、仏壇からおばけが出そうだと我々兄姉ははしゃいで川の字になって寝たのだが、それはこの仏壇前の空間、そう、いまわたしがズボッと落っこちた場所なのだ。

 

昭和54年の祖父の葬式は人が多く集まり、子供心にも盛大に行われたお葬式であることがわかった。

 

一方、叔父の晩年はどうだろう。

月下独酌。叔父はこの壊れかけの家で酒とたばこをたしなみながら猫を相手に夜を数えていたようだった。やがて認知症を発症し、地域や役所や福祉制度に助けられ、施設や病院を転々としながら、誰もお見舞いに行くこともなく亡くなった。火葬などは天涯孤独な方のために特別にお安くしてくれたそうだが、成年後見人さんは立ち会ってくれたのだろうか。成年後見人さんは、わたしのことを、「こうして気にかけて、わざわざ来てくれる親族の方がいて、松岡さんも草葉の陰で喜んでおられることでしょう」と言ってくれた。しかしいずれにしても、叔父はひっそり逝去し、お葬式も行われず、寂しい晩年であった。

 

ーどうして、盛大に見送ってもらえる方と、そうでない方が、いるのだろうー

 

その差は、人徳や能力ではなく、単に生まれた時代や環境に左右されるのではないかと感じられた。人にはタイミングや運・不運があるのだなと思う。

 

離れていたから無責任なことも言えるが、わたしはやっぱり叔父のことが好きだった。

 

わたしと同じく末っ子で猫好き、穏やかで心が優しく、祖母の手紙によれば祖母を心配させた頼りなさもあるようで、生涯独身、あまり自営の仕事ではうまくやれなかった(?)ようであったけれど、知的に優れ囲碁の上手かった叔父が、わたしは好きだった。

 

少しいたずら心が生まれ、叔父のために、巨大提灯をぶら下げてみた。

 

盛大な葬式のはじまりだ。

 

 

 

 

知識がなさ過ぎて名前はわからないが、堂々たる羽をもった鳥の絵が描いてあった。キジでいいのか?

 

お経は読めないので自分の歌など歌ってみたりして・・・

 

はい、松岡、唄います!

カシコミ カシコミ・・・それは違~う!

死体のみんな、ゲンキ~?

声が小さいぞ!

 

ルンルンルン・・・

 

これをもって、叔父の葬儀に代えさせていただいた。

はぁはぁ。

2月の南九州は寒すぎず、というよりもはやまぶしいほどの日差しが外には降り注いでいた。宮崎は本当にいいところだ。

だがこの家に一歩入れば、ここは黴臭く、外の世界とは隔絶された閉塞感がある。屋根に穴があき、壁にも穴があき、ドアも壊れて開けっ放しなのに、それは解放感を意味せず、家じゅうを風が渡っても決してさわやかではない空間。猫の死体だらけの空間。住機能が崩壊した空間は、どこか異様な雰囲気を醸し出していた。

独居の人を思うのは誰か。

その思いを受け止めるものは誰か。

猫だけか。

孤独な家にはその方の思いが成仏することなく残され、身体は死んでもその思いは聞こえない声をあげ、目に見えない文字を描き、何かを伝えようとしている。冒頭に出てきた詩友で俳優の「おもとなほ」さんがここにいたら、どんな演劇をしてくれるだろうな・・・床が抜け落ち、屋根に穴が開く芝居小屋で、死体と一緒に即興芝居、ハハハ、楽しいな・・・ハハハ・・・・わたしもだんだん現実感が失われてゆくな・・・この母屋に居続けると、だんだんわたしも透明になってゆき、いろんなものの声が聞こえてくるようになる。

 

成仏しなかった皆さん、猫の皆にゃさん、どうか、どうか、安らかに・・・。

 

その頃、風が強く吹いた。家をガタガタと揺らした。

 

ふと見上げると、ここの天井の板も腐って、落ちそうになっていることに気づく。

 

 

そのとき、はじめて気づいた。

 

ここにいたら危ない。

 

それも誰かのメッセージだった:

 

ここにいたら危ない。出ていけ!

 

・・・前回、はじめてここに来たときは、夢見心地だったね・・・田舎の古い家って素敵だなぁ、昭和だねぇ、演劇的な空間が素敵だって思っていた。

他人事のようにわくわくしたその家が、「自分事」となったとき、自分は家に含まれてしまい、家に食べられてしまう、あちら側に自分を誘い込む魔の家と化す。

 

怖い、と、はじめて思った。

 

 

 

まだ外は明るかったが、母屋を去ることにした。

 

「・・・みんな、みんな、成仏しますように。」

 

さまざまなものに手をあわせ、建物としてはまだマシな、もう一軒の建物(離れ)に向かった。

 

 

(続く)

 

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◆松岡宮からのお知らせ

 

●8月20日(日)16時~20時 路上作曲高円寺♪

 

今年はじめて、高円寺の「北中夜市」にてCD路上販売&即興歌作りをします。 

 

 

有名な「素人の乱 5号店」などがある、北中通り商店街です。 

うたでつながることができれば幸いです。

 

 

●クロコダイル「ウクレレエイド」 9月4日(月)19時~22時のどこか 

 

原宿クロコダイル「ウクレレエイド」出演することになりました。

MusicCharge 500円+ワンオーダー。

TikTokでバズった戦争関連の唄をメドレーにしようかなと思っています。

お食事もできる、広くてよいお店ですので、お気軽にお立ち寄りくださいね。

 

 

●デザフェス58 11月12日(日)夕方ごろ 

 

 デザインフェスタ、この秋も室内パフォーマンスステージにて出演させていただきます。

3期連続になりますが、いつも多くの反響と売り上げがあり、ありがたいなと思います。

こちらもTikTok系のショートソングメドレーを入れてみようと思っています。

 

 

松岡宮のCDは、Amazon、BASEのほか、メロンブックスさんでも購入できます。

 

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1859970

 

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変な手芸品もおいてますのでぜひみてやってくださいね。

 

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作品を買い支えて下さる皆様のおかげで創作を続けることができます。

日頃の応援に感謝申し上げます。

 

 

記事はこれで終わりです。以下は投げ銭です

 

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