駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

隣 人 物 語

これは、東急の駅に掲示されている、東急グループのポスターである。

段差はミルフィールの甘さで重ねあわされる、何段も。

山を切り開いて郊外にしました、ストロベリーのジャムを重ねて。

その暖色づかいの柔らかな雰囲気に包まれた階段広場に、行き交う人々、子供連れも多く、この夜の幸福な家庭の団欒を思わせる。また、よくみると屋根があり、どうらここは大きな駅舎のようでもある。

その平和な風景のなか、お年寄りに道を指し示す影は、いくぶんふっくらしてみえるが、たぶん、駅員だ。

その影は薄くなったとはいえ、東急ポスターにおいて、駅員という人はつねに必要な存在なのだ、人、ひと、ヒトであるがゆえに。

 

ここはきっと郊外の、坂の多い街。

ワーク、スタディ、買い物で、疲れた両脚、ふくらはぎ、きどったヒールの靴で痛む踵(かかと)、誰かに言われたきつい言葉、笑顔のホワイトクリームで包んで。

 

この痛み、この疲れ、どこに飛ばせばいいのでしょうか、駅員さん?

 

ーああ、それなら、西口を出て 左に進んでー

ー通過電車の強風にご注意くださいー

 

デンデケデント♪

デンデケデント♪

友達の多くが住むデント(田園都市線)がやってくる。未来の急病人たちを詰め込み、地下を駆け抜けやがて地上に上がり川面にびらびらと波を立てる夕映えを横切る頃、あるいは任務を詰め込み過ぎたリュックを前に抱えた乗客でいっぱいの東横線が、不自由という名の駅を出発し多摩川の手前に差し掛かる頃、汗は川面を乱し、駅員と乗務員の疲労を蓄積させながら、日々は過ぎてゆく。

 

自分が乗っているガラスの向こうに、くま、が、いる。

映る自分の顔、目の下に、くま、が、いる。

小さいけれど、怖い、くま。

疲れすぎた東京の電車では どこからかつぶやきが聞こえる。

「まだ下がいる まだ下がいる 自分が叩ける下がいる」

そういえば少し前

「姥捨ては正しいと思うんです」という友人の言葉に気色ばんで怒ったこともあったっけ・・・

カーブした姿勢のままで「多摩川」駅

そこで乗り換える、むかしの「目蒲線」、いまは「多摩川線」。

3両編成の可愛い列車に疲労困憊をぎっしり詰め込み、三角屋根が美しい東急蒲田駅に 到着ー。

 

ガール・ド・リヨン(リヨン駅)のようなこの駅は

フランス語で ガール・ド・カマタ。

カマタはおしゃれな街である(←?)。

 

疲れた身体がたどり着く そんな素敵なガール・ド・カマタで、わたしは強烈な文字を見た。

 

こちらの、文字。

 

 

🌸「こちらに座らないでください」🌸

 

この文字はわたしを驚かせ、疲れを倍加させた。

命令する声が今でも聴こえるようだ。

 

 ー約束してくれ すべては か弱いこの花を 守るため ラララー

 ーひとはつねに無疲労であれー

 ーここに座らないあなたが素敵ー

 ー届くのがほぼ不可能な小さな星をめざし中高年は空を飛べ ラララー

 

・・・そんな約束の歌が流れるとき、ひとは、花に、アンスリウムに、負けている。

東急クオリティのなかで、人の疲労は紙で出来た花よりも軽い。

 

泣かないで 両の脚

(ぷるぷると泣いている 両の脚)

泣かないで 両の脚

弱った人が増えてゆくたび弱っていないことに価値がうまれる。

それはギリシャ彫刻のアポロンだったり

それは民衆を導く自由の女神だったり

ろーよっぱ?蒲田のろーよっぱ?よっぱ?よっぱ?

もう見えなくなった小さな星が見えていないのに見えているかのように見上げている首がぴきっと鳴いた

 

わたしたちの社会は疲労しすぎている

 

だが、座ることは、許されない。

 

 

 

・・・こちらに座る必要がないように フィットネスで鍛えましょう!

 

 

・・・こちらに座る必要がないくらいに ハイキングしましょう!

 

 

・・・・こちらに座らないで、がんばって永代供養されましょう!

 

・・・厳しいなぁ・・・生きるって。

・・・自分が体力が無くなってきて、はじめてわかる、この街のもつ、厳しさ。

 

わたしはむかしからむじゃきな命令の声をいつまでも反芻しながらきき続けており、「そこにいなさい」と言われればずっとそこに居り、いい子にふるまった。

 

うむ、がんばろう。座らなくてもいいように、身体を鍛えよう。

 

 

 

「まっちゃんは山上容疑者をどんな詩にするのかしら?」

 

親友の言葉にびっくりしてしまった。

 

空に活火山、地下に下水管。今日もぐったりした雰囲気の広がる駅前広場、痩せた鳩の群がる蒲田駅西口、樹木の周囲には座りにくい円形の棒ベンチ、おや、ひとだまが、ふわふわと浮かんでいる、ひとつ、ふたつ、たくさんのひとだま、あかりを落とした商店街のシャッターの前ではこれから横になって寝る人がみえる、これまで出会ってきたひとを思い出す、おしゃれなひと、優しいひとがたくさんいたことを、今はもういない、お金がないひとは気配り上手なひとで、自分が取引で使うとっておきの高級なカフェのリストを教えてくれたっけ、行ってみたらコーヒーが高価で驚いたけど、素敵なお店だった・・・どうしてわたしの周りはお金で苦労する人だらけなんだろう・・・タクシーが列をなす駅前広場には、ひとだまがいくつも浮かんでいる、消えそうなひとだま、燃えさかるひとだま、今日もあなたは苦しかったね、今日もあなたは無理をしたね、疲れたね、ふわふわ漂うひとだまがいくつもガードにそって泳いでゆく、どこからか声がする、ぼく有名になりたいです、僕どうしたらたくさんの人の称賛を得られるんだろう、それはとても大きくて小さな声、なにも元総理を撃たなくても誰かが気づいたなら、いいね、こんな月の夜、いちばん小さな声に耳を澄ませて、書く、そして、わたしは英語を習い始め、身体を鍛え始める。

 

 

インセー。

 

相変わらず英会話の日々である。

ある日のレッスンで、英会話のテーマが「social work and community」だったことがあった。

自分はPsychiatric Social Worker(PSW)の資格を持っており、それに近いのかなと思ったが、その予想は違っていた。

 

その英会話は、おおむねこんな感じだった。

 

サム:隣に引っ越してきた人が、ソーシャルワーカーになってくれる人を募集しているよ。

アリス:じゃあ、わたしがソーシャルワーカーになるわ。困っている人を助けるのは、喜びだから。

 

はじめ、この文をよみながら、アリスは有資格者なのかな・・・と思ってしまった自分がいた。誤解だった。

 

英会話の先生にも聞いてみた、「ソーシャルワーカーって何ですか?」と。

すると、「隣の人とか近所の人で、困っている人を助ける人です」という旨の答えが戻って来たが、その答えが、何かピンとこない自分がいた。

どうしてか、自分には、隣の人とか近所の人が、困っている人を助けるというイメージがなかったのだ。

 

その日の英会話はさらに続き、いくつかの英語の質問に答えなくてはならない課題が出てきた。

 

最近、あなたは誰かを助けましたか?

   -うーん・・・・家族を助けたかな?

あなたは最近、近所の人を助けましたか?

   -助けてないです。

あなたにお金があったら、どのようなチャリティ活動をしますか?

   ーうーん・・・猫の不妊手術のお手伝いとか・・・

それをすることで、どんないいことがありますか?

  -うー・・・、かわいそうな猫が、増えすぎないように・・・。

 

 

このような会話を交わしていたら、「あなたは人より猫を助けたいの?」と笑われたのだった。

フィリピンの太陽のような、明るい笑顔で。

 

言われてみればそうだ。

なぜ、隣人を助けようと思わないで、猫を助けようと思ったのか。

 

なぜ、隣人を助けようという発想が、出てこないのか。

 

隣人・・・隣人・・・。

 

ニンジン食べよう・・・。

 

夏の空は太い筆で描かれた油彩。

空に雲が縦に入り、秋の到来を予感させる。

日本はいい国だと思う気持ちと、日本は居心地が悪いと思う気持ちが、せめぎあう。

ひとだまがうしろから追い抜き、また停止する。

耳を澄ませ、顔をあげる。

ひとまず、わたしは。挨拶をする。

誰も相手のいない

空白へと

 

 

 

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PDF版は販売しています。PDF版の支払いはクレカのみでご迷惑をおかけします。

この間はじめてPDFが売れました。ありがとうございました。

 

 

それと、お盆の松岡事務所で、久しぶりに「小さな発表会」しました。

配信がうまくいかなくて、しっちゃかめっちゃかのドタバタでしたが・・・前半のしっちゃかめっちゃかを削除すると、こんな感じ・・・。

青条さんの朗読、おもとさんの演技。あわてて使ったコンデンサマイク、さすが音をよく拾っています。ノイズも多いですが・・・・・。ちなみに松岡はアクトしていません。

 

 

youtu.be

 

これ以外にも朝の即興演劇や素敵なシャンソンもあり、大満足の発表会でした。

 

隣近所に音が漏れないように気を付けたが、わたしは人の声でにぎやかな街も好き。

 

いつか、隣人も仲間として参加していただく日が来ますように。

 

 

ふわふわ

 ふわふわ

  なぜか自分の身体が軽く思える

   半分くらいは死んでいるのかもしれない

    母の命日、アジのひらきのような母の死に顔を思い出す。

     自分も もはや生きているのかわからない夕暮れ

       河原でひとだまたちと おいかけっこをした。

         もうすぐ秋が来る。