「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」という本がとても面白かったです。
平成27年に出て、かなり売れた本のようですが、いまごろ知りました。
水木しげる風の絵で(弟子とかではないそうです)、有名な文学作品を、だいたい10ページくらいの漫画で紹介したものです。
紹介された文学作品は「人間失格(太宰治)」「山月記(中島敦)」「檸檬(梶井基次郎)」「舞姫(森鴎外)」など、本当に有名なものばかり。
とはいえ、実はわたしはあまり文学作品を読んできたわけではないので、「三四郎(夏目漱石)」「雪の女王(アンデルセン)」「蒲団(田山花袋)」など半数くらいは、この本を読んでこんな話だったのかと、初めて知りました。
水木しげる風の絵が、良い意味で無個性であり、歴史を背負ってそこにある文学にマッチしていて、良いと思いました。「判で押したような」人物の造詣と、古めかしい線で描かれた風景が、こうした文学の紹介には合っており、あまり絵に引っ張られないで文学の世界に入ることが出来ました。
さらに良かったのは、本文からの引用文が多かったこと。
漢字づかい、言葉づかいは、その作品の大切な個性だと思いますが、それが掲載されているのが良かったです。
例えば「檸檬」では・・・
>生活がまだ
>蝕まれていなかった以前
>私の好きであった所は
>たとえば丸善であった
(「檸檬」梶井基次郎)
改行は仕方ないと思いますが、それ以外はもとの文が残されています。
この文を、たとえば「丸善に行くのが好きだった」とサラっと書いてしまうと、もとの文のもつ格調が減ってしまいます。
作家性は作品そのものにしか現れないので・・・やはり、まとめや紹介であっても、原文を読みたいのです。
本書は原文が出てくるので、ときおり難しく感じますが、それをウームと読むのもまた楽しい読書体験でした。
暗い絵柄に合ったダークな話だけでなく、「野菊の墓」「風立ちぬ」「たけくらべ」などの恋愛ものの紹介が意外に良かったです。「たけくらべ」は「ガラスの仮面」初期にもあったなぁと思い出したり・・・「野菊の墓」は、「あ、死んじゃうんだ!」(ネタバレ)と・・・ほんとに何もしらない自分でしたが・・・若さあふれる恋愛ものは、この絵柄だからこそ邪魔にならないという感じがします。
山月記の虎、ごんぎつねのキツネは、なんだか可愛く、動物ものだと絵の可愛さが少し勝るというか主張しはじめる印象もありました。可愛いですが・・・。
しかし、知っておくべき文学作品を読んでるようで読んでない自分に気づかされますね・・・。機会があれば原書も読みたいものです。
おわり。
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作家性は作品そのものにしか現れない・・・ということで、松岡の作品はこちらです★
よかったら聴いてみてね。
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