駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

川の向こう 川のこちら

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・・・そうだ 10月の台風19号の影響で ここから入る左岸のサイクリングロードは通行止めになっていたんだった・・・

 

多摩川大橋で そんなことに気づく

非常事態宣言の夜のことです

重い荷物をハンドルにぶらさげながら 不要不急かもしれない移動の最中

4月7日までの東京都内の感染者数は1000人を超えたとニュースが告げた

知事の記者会見を思い出しながら

 

・・・しまったなあ このままではサイクリングロードに乗れない

・・・今日は川崎側から北上するか

 

そう決めて自転車をゆっくり押して進んだ

 

外出自粛の空のした 

春風はぬるく柔らかで 野外はとても気持ちがいい

 

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黄昏めく橋の歩道で ランナーたちとすれ違う

このごろ 野外に出て歩くだけで 幸福だなと思う

その思いはみな同じようで

4月らしく いろいろな色の花が咲き始めたことにさえ 感動を覚える

いまわたしが渡っている多摩川大橋は多摩川下流にかかる大きな橋で

東京都大田区と 神奈川県川崎市を結んでいます

まるでサインカーブのよう ゆるやかなアーチ型の橋

もうすぐ海に注ぎ込む水たちで

ゆったりしている水面のうえ

数匹の鳥たちが のんびりと泳いでいるのが見える

富士山のてっぺんがシルエットになって薄赤色の西のむこうに溶けて行くのが

みえる

 

県境の橋なので 橋の真ん中で 東京都から神奈川県になる

 

ふいに

三原順の「はみだしっ子2 夢をごらん」にあったディビーの言葉を思い出す

 

 

>忠告しといてやる

>河は渡るな!

>こっちにいる限り

>オレ達はおまえ達に

>何もしない

>だが連中は違う

>けがしたくなきゃ

>河を渡るな!

>絶対に!!

 

 

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川を渡った・・・

 

めったに川崎側、つまり右岸のサイクリングロードを走らないので

その風景は新鮮にみえました

非常事態宣言があったそうだけど街は楽しそうで

4人組の少年たちや

とても薄着の高齢者ランナーや

犬の散歩をする子供たち

お買い物のご夫婦

そしてとても大きな満月

いつもながらの平和な風景にみえました

そしておなじみの大田区の夜景が遠くにみえたとき いつもより大田区が立派に輝いてみえました

 

台風19号の被害を受けた時に 感じたことがあります

このあたりは ひとつなんだ ということ

多摩川を挟んで東京と神奈川に別れるのではなく

わたしたちはは もともと川を中心にした ひとつの地域だった

 

川が暴れるときは

右岸も左岸も似たように暴れるのさ・・・

 

川によって分断されるものなど 何もないのだ ということ

 

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だけど行政的には東京都と神奈川県の違いは大きなもの

川崎側からみえる大田区の風景の輝かしさをみつめながら

・・・わたしがここで死んだら・・・

川崎で・・神奈川県で死んだ、ということになるのだな・・・

と思う・・・

 

4月7日の夜の時点で

東京の感染者は1000人を超えました

神奈川県は200人代

 

その 800人の差はとても大きい壁で

壁の向こうからやってきた大田区民のわたしは

来るな 来るなと 石を投げられるのかしら

川の向こうから来た危険人物として 来るなと石を投げられるのかしら

 

そんなことはなかった

 

右岸の草むらから吹く川崎の風は春の暖かみを含んだ優しい風で

都民は出て行け!なんて 言われなかった・・・

 

・・・この一週間 仕事の約束が潰れまくった

遠くから来られる方が 

自分の身の安全が第一だからと 来られなくなった

家で高齢の親をみているから 

医療機関で 働いているから 

東京には行けないと 

多くの仲間たちから 丁寧なご連絡をいただいた

どれも これも 理にかなったことだ 当然のことだ

わたしがその立場でも そうしただろう

 

だが まだ 自分自身が 納得していない

自分の住んでいるこの東京が それほどまでに危険な街になったということを

まだ 納得しきれていない

 

東京のひとは 来るな 来るな 

東京には 行けない 行けない

 

そう言われてしまう街になったということ 自分のことだから 自分がいちばん わかっていない・・・

 

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多摩川は相変らず時間を緩やかに流し富士山は見えなくなりました

 

ああ ガス橋が見えてきた

ここで右折して大田区に入るとしよう・・・

 

「東京脱出」

「コロナ疎開

非難の言葉とともに そんな言葉も踊るようになった

たしかに道路は西に向かって渋滞しているが

必要なお仕事なのかもしれないと 思う・・・

 

そしてわたしはガス橋を東へ 

都内へ戻ります

はい 

確かに 東京都民です

わたしもすでに感染者かもしれません

身体が丈夫すぎてわからないのかもしれません

石を投げられる立場になるなんて思いもしなかったけれど

自分の周りの砂がすうっと引いて 自分ひとりの島になってしまうような

この なんともいえない孤独な思い

大切にしよう

ひとを分断してしまうものについてあれこれと考えながら今夜から家でおとなしくしていよう

 

(そういえば車ってパーソナルスペースで なかなかいいものですね)

 

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台風19号で被害を受けた河川敷

修復を続ける重機の影絵

川のまわりはいつも絵のように美しい

 

その風景のなか

タタタン タタタン

とても気持ちの良い音楽を奏でながら 鉄橋を新幹線が渡っていった

非常事態宣言の夜のことです

おそらくお客さんも少ないだろうに 定時運行 お疲れさまです。

 

満月に照らされながら

また マラソンする人々が 駆け抜けていった

 

川の向こう 川のこちら もともとそれはひとつだった

 

けなげで美しい鉄道や

船や飛行機や自動車が

遠くを近くにしてくれた

川の向こう 川のこちら もともとそれはひとつだった

 

そして いま

分断された東京都内のわたしのもとに

たくさんの労りのメールやメッセージが届く

大丈夫ですか?

大丈夫ですか?

大丈夫ですか?

 

・・・そんなに危険地帯にいるんだね わたしは・・・

 

元気です と 返事を書きながら

しばらくは おとなしくしています。

 

 

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