駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

ホームのドアと列車のあいだ

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折り紙でできた駅員(のようなもの)がここで何かを拾っている

マジックハンドも使いながら

駅員が拾おうとしているのは

目にはみえないもので

形もないものだった

そして駅員の身体があまりに薄かったので

つい 折り紙で出来ていると 思ったのだった

 

「はい 駅員はみな ホームドアに収納されることになりまして・・・

 はい 始発から終電まで 休みなく働いていますよ

 はい お客様のご安全の ため」

 

ホームのドアと列車のあいだ

そこでは 捨て去られたものが山のように蓄積されている

 

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駅の安全のポイントとなるのは「あいだ」なんです

 過密する都会では その「あいだ」が損なわれ

あるいは 犠牲になることがある

 

近すぎてもいけないのが 人と人とをつなぐ あいだ

複雑すぎるといけないのが 外と中をつなぐ あいだ

電車と電車の間隔も あいだ

そしてプラットホームと電車の あいだ 

 

何気ない朝の通勤で 人々がまたぐ その あいだには

命を食べつくす峡谷が くちを開いて待っている

底なしの 隙間なんです

 

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ある街に 「百獣が谷」と名付けられた隙間があった

 

走行する列車に触れたとたんに落ちる谷

知らないうちに ぽんっと人が落ちているのだが 誰も気づかない

いじめられたこどもが

不正経理を行った経理のひとが 

落ちていった

森のなか 百獣の王も落ちていたという

オチもあった

どうりで この街は平和

 

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そんな百獣の谷をもつ駅にホームドアが出来た

駅を利用する村人はこの動きを歓迎した

もう 列車に接触してけがをする人はいなくなるだろう

正体をなくした人が 列車に近づいてゆくこともなくなるだろう

安全のためには ホームドアだからと 歓迎した

 

そんなふうに 平成のなかごろから ホームドアは 増え続けて来た

 

ホームドアのなかには駅員が収納されている

うすく のされた 駅員たちが ホームドアのなかに入れられている

折り紙のように 制服を着たその体を伸ばされて

折り鶴のように 制服を着たその体は折りたたまれて

(ついでに祈りなさい 駅の安寧を)

それも ひとりじゃない 

ドアひとつにつき 2名の駅員が必要なので

ホーム片面につき 40名の制服がこの薄いドアに収納されている

年齢は20代から60代まで幅広く

すべては駅の安全のため

 

・・・・行ってくれるな!

・・・・はっ! 立派で故障しないホームドアになります!

 

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折り紙でできた駅員(のようなもの)がここで何かを拾っている

マジックハンドも使いながら

駅員が拾おうとしているのは

目にはみえないもので

形もないものだった

おいでよ おいでよ 百獣の谷へおいでよ

薄い身体つきの駅員たちが誘いこむときがある

列車到着のアナウンスとともに閉められて

列車が止まったときに開くその扉に

白い手袋が見えるとき

誘いこまれている

ねえお客様 列車の中じゃない ホームの上じゃない

ホームのドアと列車のあいだ も

あるのですよ

ねえ お客様 いつでもよろしいですよ この細い隙間で 眠りませんか?

駅員とともに この空間で 

過ごしてみませんか?

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秋も深まって来た空

うずまく風は むかし 駅員と呼ばれた何かに 似ている

 

いつものように乗り込む列車で

ほんの少し 

動きを とめてみる

進行方向に向かって 首をまわし 視線を向けると

その暗くて細い隙間には

名前もない 形もない 何かがくるくると渦をまいており

駅員の白い手袋が 優しい手つきで 

その 何かを

拾い集めていた