駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

台風にもえる乗客たち

台風というものにもえてしまうの 乗客は

台風というものに 骨を折られたい傘のようなもの

どうしてあなた こんな日にここに来てしまったのか・・・

青ざめた顔で駅員が呟いても

乗客とは しょうがない生き物なのよ

乗客とは 生きてゆく本能を失った かなしいお菓子の箱なのよ

お菓子の箱の大群が押し寄せる改札口では入場規制の雨あらし

だって鉄道はいま壊滅状態

忘れ去られた凧を飛ばす風が鉄道を止めた川沿いの街

お客さま 

お客さま

・・・だめだ お客さまには 通じない・・・

土嚢につまづく駅員のジャケットに雨のしみが絵を描く

お菓子の箱はびしょぬれで

もう足元から崩れそうなのに

台風というものに もえてしまうの

乗客は

風に吹かれる可能性のあるもの全てを片付ける台風の朝の駅員

この東京で駅員だけが正気を保っていた

のぼりも 旗も キヨスクの新聞も

片付けて 身体を丸めて静かにしていたい

だけど乗客はつぎつぎに来る

ああ風がまた強まってきました

お客さま どうか気を確かに持ってください

お客さま うかうかしていると 飛ばされてしまいますよ

骨を折られた傘のお客さま

ぐったりとした足取りで

疲れつかれて仕事場へ向かうのですか

余計なもののない駅に

お客さまのネクタイだけがたなびいています

そしてあっけなく去りゆく台風

あなたは惜しんで空を見上げた

やっぱり仕事に来てよかったと気持ちがよくなる骨の折れた傘

台風はいいなあ

大きな声じゃ言えないけれどね

台風はいいなあ

仕事に来たって気分にしてくれるね

何事もなかったように血色をとりもどす乗客たちを見ながら

ひとが ひとに みえなくなったと

血色をなくしてゆくのは

駅員だったかもしれない

・・・台風のなか仕事に向かうって なんて気持ちいいんだろうね

電車がとまって 振替輸送も不可能で 入場規制の改札口で 人ごみに巻き込まれて

ああ 一体感があるね

ああ お祭りだね

ちゃんと働いているって気がするね・・・

未熟な人間ほど 安易に役立ちたがるもので

台風のなか通勤して 同僚に褒められた高揚感に満たされるわたしを

駅員がみている

・・・恐ろしいのは風じゃない あなたが夕方に抱いた高揚感です・・・

駅員がみている