駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

小田急駅員避雷神

「小田急電車を雷が直撃」

>関東地方では12日夕方から夜にかけて東京や神奈川などで激しい雷雨となりましたが、

>東京都内の小田急線では走行中の電車に雷が直撃し、その場で自動停車していたことが分かりました。

その日

小田急駅員の平井が呼びだされた

普段は鋼鉄のような能面をして

黒い立派な制服に包まれた小柄な平井は

いるのかいないのか 分からないような 駅員だった

猛暑のあとの夕暮れに灰色の雲が垂れ込め

これから100% 雷の予報が出ている

 平井よ わかったな お前の出番だ・・・

小田急駅員の平井は しずかに頷き

小田急電車の車体の屋根に登りはじめた

乗客がかたずをのんで見守っている

ママ、あの駅員さん、どうなっちゃうの・・・

あれはね、だれかひとり、雷の神様に、ささげなくちゃ、いけないの。名誉なお仕事をしている駅員さんなのよ。

小田急電車の屋根に上った平井が

両手を広げると

平井のほほに雨粒が落ちた

平井の頬は金色に輝き

・・・しあわせだ・・・

という 平井のつぶやき

平井の身体がどんどん大きくなってゆく

平井の身体がどんどん尖ってゆく

僕の名前は 平井伸(ひらい・しん)です

この日のために 生まれてきました

小田急線の避雷針となるために 入社しました

どきどきしますね

しあわせだ

もうすぐ多摩川を渡るんだ

親父とやったバーベキュー 弟と川崎側から見た花火

もうすぐ思い出の多摩川を渡るんだ

やがて電車の屋根の上で5メートル以上の身長になった平井が

空を見上げて敬礼した

瞬間!

平井をめがけて落ちる空中放電!

バリバリ!

・・・一瞬にして焼け焦げる平井の腕から 焦げ臭いにおいが充満する

半分黒くなってしまった平井の身体が制服のなかでぼろっとくずおれた

平井はこの一瞬のために生まれてそしてこの一瞬で消えてゆく

避雷針だったのだ

 お客さま どうかご安心ください 小田急は落雷に対して万全の対策をとっております・・・

ママ、電車から火花が咲いたね、空に届いて、花火みたいだったわ、

ええ、きれいだわね、小田急はちゃんと考えてあるから、小田急はきちんと対策しているから、安全で、安心ね。ママも花火は、大好き、よ。