駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

おむつと一緒に生まれてきました



おむつと一緒に生まれてきました
自分では締められない栓を抱えて生まれてきました
冬の大三角にこぼれた雫をふき取ってくれた
きっと 誰かの布巾が
今頃 風にたなびいているのです  

おむつと一緒に生まれてきました  
ごめんなさいと丸くなった姿勢で生まれてきました  
言葉を知らないチューリップのつぼみ  
おめでとうの声が だんだん  身体をひらいてゆく       

最初に名づけられたのは お・荷物という言葉によって でした    
母の背中のお・荷物だったわたしが    
お荷物でなくなるのは     
いつ そして どうして    
はじめての旅路     
夏の登り坂    
風の国道を歩き出したとき    
どこかのバス停においてきた おむつのこと    
わたしはいつしか 忘れてしまった


   

おむつと一緒に生まれてきました    
おむつと一緒に歩いてゆくのです    
おむつと一緒に午睡の沼に憩い    
おむつと一緒にこの世界を去るのです     

給料をいただくお仕事のさなか     
おむつを装着する     
その瞬間     
あの頃の よるべなさが 戻ってくる     
おむつをした身は風船になり誰かに握っていただくのを待つ     
あの頃は おかあさんが鍵を持っていました     
言葉をひとつ増やすための鍵     
涙を笑顔に変換する鍵     
地図を上手くなぞるための鍵     
おかあさんが空の色さえ 決めていた     
あの よるべなさ



わたしの股間に 壊れた栓があった
赤い噴水が噴き出ておむつを汚した
自分では締められない栓を抱えて生まれてきました 
どうか悲しまないで 
自分では締められない栓を抱えて生まれてきました
それは間違ってなどいない
お・荷物と荷物の違いなんて 
本当はたいしたことではないの
それは 持つ人が決めること

今夜 こぼれて 漏れて 汚れて 汚す わたしは
身体をひらいて 思い出す
いっしょうけんめい 思い出す
銀河をめぐる星たちの腕に暖かく抱かれてこの世界に生まれ落ちた夜のこと
おめでとうの声を浴びて 
輝いているそれは
自分では何ひとつ生き抜くことのできない 
お・荷物 だったのです