駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

二本のレールにはさまれた島式のホーム

朝のラッシュ

中目黒駅では渋谷行きと東武動物公園行きへと分かれる

二本のレールにはさまれたこのホームには

駅員 駅員 駅員が ずらり並んで

握手、握手、列車と握手、徐行しながら発車するラッシュの列車の

ステンレスの照り返しと

握手、して

わたしを乗せた急行渋谷行きが ゆっくりと終点に向かう

女でもなく男でもない そんな何かになれないものか と

わたしは身体のわずかばかりを女の岸へと切り落として

残りは女であることを拒否しながらも 

どこにも行けない未決の箱に入れられたまま もうすぐ忘れ去られようとしている

同一性を捨てたら 消えてしまうのね みんな

わたしを忘れないで と 土下座しながら

それは単に同一性しかない存在の、駅員を抱く

それはただの決まりでしかない存在の、駅員を抱く

駅員はすてきだ

駅員は美しい

雲の向こうに沸き立つ虹の、駅員を抱く朝のわたしが トンネルの下で夢うつつ、駅員はきれいだ・・・

・・・・駅員とわたしの間には傾斜がある、わたしはこんなにドロドログチャグチャなのに、駅員はきわめて整然としていて、そんな駅員が線を引く、高いところから、優しい冷たさで、わたしを抱く、白手袋。

中目黒駅の駅員たちが乗客を抱く、お客さま、行ってらっしゃい今日も、がんばって。

乗客たちが駅員を抱く、許しのように、乗客たちはとろける、その強さそのまま駅員はまた乗客を抱く、お客さま、お疲れ様です、がんばって。

わたしは駅員の髪を抱く、汗を見つける、お疲れ様です、

わたしは駅員の手袋を抱く、よく見ると汚れています、お疲れ様です、

駅員の身体は人間らしい鼓動を持っているらしい、それは聞こえない地底の音楽、お疲れ様です、

世界で一番といわれる日本の鉄道を

朝日の当たる高みで動かしている駅員

高架線の上で朝焼け浴びると、ほら、こんなにほんとうは小さい、小さい、駅員たち、

流れる列車に向けて ヨシ ヨシ ヨシ 手袋のウェーブが

白鳥のよう

群舞のよう

でした

駅員は美しい

それを こんなに 訳の分からない水溜りで 見上げている

駅員

あなたが男でなかったら と わたしはどれだけ願ったことでしょう