駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮が描く東京の風景たち◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

布、それは車掌の名前です

「・・・お客様、恐れ入ります・・・」

と 

車掌に声をかけられることがある

しばしばそれは始発駅で発車を待っているとき

客室と車掌室をつなぐ扉を 車掌が開く場合

「・・・お客様、恐れ入ります・・・」

と 今日もその扉は緩やかに開かれた

すると

いま 

車掌とわたしの体は至近距離へと接近し

しかも 

なにも 

さえぎるものはない

新しい東急の制服は高級感をたたえて

その制服が よくみるとストライプの模様をしていることに

気づくほどの 距離で

車掌とわたしが向かい合う

そしてその きわめて没個性的な顔立ちの車掌が

扉を開けたまま アナウンスを始める

 この電車は・・・★★行きです・・・

ふと見つめる名札

車掌の苗字には「布」という字が

使われていた・・・・

その瞬間、わたしは車掌とつながってしまった!

車掌の布に、グイっと抱かれて、もう息ができないほど、車掌の体温を感じてしまった

車掌、あなたは布なのだ、紺色の引き締まった布、乗客をグルリと包み込んでしまう、布。高級感あふれる、天上の、紺碧の、布。

・・・お客様にご案内申し上げます・・・

と、車掌が発声する、その息遣いが、わたしに伝わる、わたしに結ばれる・・・なんて特別な、車掌。

ごめんなさい、わたし、目が痴漢する、目が痴漢する、だめ、いけない、目が車掌に触れる、いけない、目を向けるな、そちらへ、わたしの目はこんなに加害的だ、わたしの目はこんなに人の体を刺すのだ、とまらない、とめられない、目が痴漢する、痴漢する、目だけでもうその車掌のかたぐち、平熱をなぜている、車掌の布、車掌は布、このひとはわたしの特別な、布・・・

・・・予報どおり、雨が強くなってきた

それから列車はいくつもの駅を過ぎていった

車掌のなで肩も ぽつぽつと濡れていた

きれいな背中が天上のカーブを奏でていた

もはやわたしにとっては、親兄弟以上だ・・・・そんなふうに、つながってしまった、布・車掌に対して・・・・ラッシュのなかで考えていたことは・・・・あなたひとりがこれだけの乗客の面倒をみるとしたら、あなた大変だわ・・・・あなたのその体は、ほんとうにただの体で、ただの布・・・・あなたの布を求めてわたしたちは奪い合うのよ、車掌の大きな体にのっかって、その布を食い尽くす競争をしているのよ・・・

みてごらん、車窓の高く、車掌の美しい手が指し示す、夜のどこまでも高く、

架線にドレープかけながら

東京の高架線の真上に大きくひろがる紺色の布を

いくつもの夜を織り成す車掌の布

今夜 見えない星座に

あこがれ

★   ★

きょうはアルバイトでした。花粉症が悪化してズルズルしています。春眠しているうちに、なんだか仕事の仕方を忘れてしまったかのような日々です・・・。でも朝早く仕事に向かうとき、駅員さんのすばらしさ、美しさ、をあらためて感じます。駅員がわたしの視野に吸い付くように入ってきます。

わたしは、駅員が素敵なのは、駅員が素敵だから、かと思っていましたが、どうやらそれを見るわたしの見方が影響を与えているようです。わたしのなかにも、駅員を欲するとき、駅員を求めるとき、駅員に満たされるときが、あるのでしょう。

この世界に駅員のあることの喜びに、ボク、渋谷のハチ公も喜んでいます。