駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮の日々の記録◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

蝉 の 埋 葬 (未完)

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事務所の玄関で蝉を見つけた

ひくり ひくりと ひっくり返り・・・

ひくり ひくり 動く羽根

このとき 彼は

まだ生きていた

 

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ころん。

踏まれないように

玄関の脇の砂利の上に隠しておいた

まだつややかな茶色い羽根

飴色の脚はぴくりぴくりと時々動いて

ファウルボールを追いかける少年

夢にまで見たこの世界 この風景

空を泳ごうとしていた

 

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次の朝 

相変わらず砂利道に彼は寝そべっていたが

飴色のきれいな脚は

すっかり動かなくなっていた

だけど身体つきは保たれており

今にも飛びそうな勢いを感じた

 フェンス直撃三塁打をなんとか二塁打で済ませようとする

俊足外野手の勢いを感じた

 

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そういえば

実家にいた猫ちゃんは

こういう蝉を見ると歓喜していじくって最後は食べてしまったものだった

だけど大田区の猫たちは

娯楽がほかにたくさんあるのか

蝉など珍しくないのか

口が肥えているのか

この玄関先にもたくさんの野良猫が通るのだけど

フン・・・

誰も見向きもしないのね・・・

 

高い空にライトフライ

もういちど空を飛びたかった蝉の埋葬

空は夏の終わりの雲

不思議な模様を描いています

飴色の身体は

このまま 

すぐに

朽ち果ててゆくのでしょうと

思っていた・・・

  

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残暑厳しい日もあった

風が落ち葉を運んできた

あれから4日ほど

蝉の体は色つやをなくして

かたちはそのままだけど

死体らしくなったね

イージーな外野へのゴロをキャッチする飴色の脚

わたしを待っていてくれる死体

ミヤさん おはよう

あれ、俺、死んでる・・・

あれ、俺、もう飛べないのか・・・

小さい頃は夢みていたものさ

野球で甲子園に行きたかった

それから

優しい奥さんと可愛い子供に囲まれて木の上からしょんべんをして・・・

平凡な幸せがほしかった

まあ いいか ここで

 

うん

生まれてよかったよ

幸せだったよ

 

蝉とわたしが同じことを言った

 

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それから次の日

なぜか蝉は砂まみれになっていた

よく見ると蟻がたくさん歩き回っていた

蟻たちは生きて活動している

今日も通勤、お疲れさま。

スーツがスリムな蟻の集団が整列して働く

蝉の部品を巣に持ち帰る通勤列車の労働者の群れ。

蟻の社会で蝉が生きる

死んでる蝉が言いました

ああ、ああ、

幸せなんだよね、

こうして蟻にたかられて

ミヤさんの前で朽ちてゆくの

幸せなんだよな、

と。

 

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それから4日ほどすぎた

蝉が亡くなり10日をすぎた

蝉がだんだん砂に埋もれて

立派な羽根も隠れて

もうどこにいるのかわからなくなった

今日の夜には雨と雷の予想

平凡な町にも強風が吹き荒れて

三振、ゲームセット!

これで蝉はあとかたもなく消え失せてゆく・・・

思っていた・・・。

 

ごめんなさい

これでやっと消えるんだろう

思った・・・

 

ごめんなさい

本当は そろそろ

消えてほしかった・・・・

 

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だが

雷と雨と嵐の晩を超えて

相変わらず蝉はその身をさらし続けていた

強い風と雨が砂利をさらっていったので余計にはっきり見えるのだった

ミヤさん おはよ。

俺の身体、いま、見えるだろ、見てくれ、よく 見えるだろ・・・

 

朽ちなかった。

 

朽ちてほしいと思ったのはただわたしのわがままなロマンだった。

 

死体はすぐには消えてゆかない

亡骸はそんなにすぐに無くならない

そう、俺、そう簡単に忘れ去られてなるものか

ねえ、ミヤさん、

俺はずっとあなたのそばにいるから

ああ、ミヤさん大好き💛

ここから俺たちの第2試合。

俺のこと

忘れないでよね

 

発見してから2週間以上

 この街にも秋が来たが

蝉はまだ

埋葬されていない

 

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