駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮の日々の記録◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆LIVE予定、11/4大久保ひかりのうま、11/19難波「音」、11/27神楽坂カグラネ、12/7碑文谷APIA40◆

車掌をこじらせて

写真と本文は関係ありません。

すいた電車で 連結部分のそばに座って

読書などしていた

とき

 「 Hah 若い人は ここに座っちゃ いけない 」

いきなり知らない女性にそう言われ

顔を上げる と そこには 

車掌をこじらせてしまった

女性が 立っていた

「 Oooh! 携帯! 携帯は ここで使っちゃ いけない 」

さらに

わたしのとなりのとなりに座っていた若い女性は

そんなふうに いきなり注意されている

そう ここは優先席だったのだ 

すいた電車の 優先席

「・・・お客様に ご案内申し上げます・・・・」

「・・・優先席付近では 携帯電話の電源を お切り下さい・・・・」

いつものソフトな声で車掌が案内をする

この ふかふかな赤いシートの 優先席のことですね

車掌の声は はねまくら

車掌の声は そこでは絶対であり

わたしを包み込み わたしの体幹の角度を少し変えてしまう

すらりとした小さな車掌がわたしの耳から挿入され

わたしの中に制服ごと入り込む

車掌はわたしに溶け込み

わたしはかなり車掌となる

そしてわたしはわたしを抱きしめる

車掌をこじらせる

「・・・Haaaa!優先席では あなた 携帯を出しては いけない・・・・」

その女性の見張りは続いていた

この一角では電源が入った状態の携帯電話を取り出すと

誰かが 亡くなってしまう

のかもしれない

そんな 緊張感が 走り 

また車掌の声

 「・・・携帯電話の電源をお切り下さい・・・」

窓にもそんな要旨のことが書いてある

車掌もそんなふうにいつも伝えている

車掌が言語化した規則というのは

こんなふうに心に残るのですね

残酷なほど

残酷なほど

お客さん 車掌はあなたを愛しています

お客さん 車掌はあなたを一生かけて守ります

お客さん 車掌は 病めるときも 健やかなるときも・・・

お客さん あなたがいちばん 大切です・・・・

・・言葉なんだ!

言葉が その車両の 優先席付近に浮かんで

誰も引き受けようとしないまま

ふわふわと漂っている

それは誰かの屁でしょうわたしじゃない

だれもが手で追い払いながら

ふわふわと 漂っている 

言葉だけが!

 「優先席付近では携帯電話の電源をお切り下さい」

 「がんばろう日本 がんばろう東北」

 「みんなは一人のために 一人はみんなのために」

 「マタニティマークを見かけたら席を譲りましょう」

 「ベビーカーを見かけたらみんなで手助けしましょう」

 「いじめ、かっこ悪い」

 「・・・総理を変えなければ復興などありえない・・・」

 からだをなくした言葉だけが ふわふわ飛び回っている6両目

  

   わたしに言葉だけをいわないでください

   言葉がただ言葉だけであるなら

   できます します 愛しています 大切です

   って いわないで・・・・

   思い出が足場を固めて立派な宮殿を作り上げてゆく・・・

   車掌をこじらせてしまう・・・

   だって車掌の言葉はこんなに

   正しくて

   正しさに 

   ただ 惹かれてしまう

   車掌をこじらせる

それから時間が流れ

夕映えが傾いてきた

優先席付近の治安を身体をはって守るその女性は

ずっと ずっと 立ちっぱなしで

  「Khooo! ここでは 携帯電話を使っちゃ いけない!」

ずっと 叫び続けておりました

それはわたしの未来のすがた

車掌をこじらせた正しさのすがた

一部分だけ 優先席付近だけ からっぽな車両が

宵闇に近づいてゆきました