駅員観察日記(はてな編)

◆ポエトリーアーティスト松岡宮の日々の記録◆このブログはアクセスカウント以外のアクセス解析をいたしません◆

骨の傘(2004年東京ポエケット・リーディング作品)

雨の日の駅員が

忘れ物の傘を何種類も抱きながら

回送電車を見送っている・・・・


・・・後ろから!


忘れないでね


忘れないで


忘れるんじゃない


忘れるな!


わたしはいきなり叫んで駆け出し

駅員が持っていた傘をすべて・すべて・奪いながら

忘れるな!!

回送電車を追いかける、追いかける、靴が脱げても転んでも、

違うんだ!違うんだ!

・・・走るほどにわたしが抱えていた傘は向かい風に開き

それを持って走るのも大変!抵抗!抵抗!負けてはならぬ


忘れるな!

忘れるな!

傘の骨がそのうち逆向きに折れて

風にいつしかその身がなくなってしまっても

待って!

いつしかわたしは空を飛んで

パラシュートしていちめんのタンポポ操車場 回送電車の屋根に落ちて・・・・

もう わたしは 骨の傘です・・・


・・・はあ はあ・・・・

・・・そうよ 

・・・愛しいあなた へ

この傘をお届けに

参りました


・・・・違うんじゃないか?追いかけるべき ものが?・・・


◆  ◆


そういえば姉のお見舞いに行ってきたのです

といっても病気ではなく、切迫流産になりかかったのです

二ヶ月間も絶対安静ですって

姉は退屈そうにしていました

そしてベッドサイドには漫画が積んでありました

英語の勉強でもしたら?と姉に言うと

自分もそう思って本を持ってきてもらったけどやっぱり頭に入らなかったわ

と笑う

かつて、あまりにも勉強が出来すぎたのでインベーダーと呼ばれた面影もなく

実家の引き出しに入れたままの姉の書きかけの英語の単語帳

ねえ どうしましょう、どうしましょう・・・・



・・・・まだやってるの そんなこと?



◆   ◆


タンポポの草原にぽつり残った回送電車の屋根でまどろんでいたら

いつしか花はどこかに消えて髑髏(どくろ)の群れになっていました

ここは森のあずまや、雫の垂れる音がする

手のひらサイズの髑髏が一面咲き乱れる春の野原で骨の傘を開けば

傘の骨の先っぽに髑髏が刺さって

くるくる廻せば髑髏が廻る、目が廻る・・・・


・・・・姉の単語帳の余白にしょうがないからわたしが何かを書きましょう


 ・・・井上君

はじめて見た日から 恋の花咲いたんだよ(^^)

好きじゃあ~


松岡より・・・・


・・・するとこれを読んだ髑髏の群れがいっせいに笑った

うるさいなあ もう・・・


じゃあ こんな詩は どう?


 ♪厳格なる

ピアノの音

大きな窓から 

差し込む月光♪


♪ ワイシャツの

透き通る

海の色が 

悲しいわ・・・・♪


そう、この詩には曲もついているのよ、聞いているの?わたしは作詞家になりたいの、それから京大に行って化学をやりながら小説を書くの、漫画家にもなりたいの、少女からのファンレターが欲しいから 少女がニックネームを付けやすいペンネームを考えなくちゃね・・・!!!


・・・見せつけないで あなたの恥ずかしい ところを 迷惑よ それって。



◆   ◆ 


ここで アンケートの結果を発表しま~す!

クラスで一番個性的なのは~、

じゃ じゃーん、

マ ツ オ カ さん 

でーす!



・・・骨の傘 差して、走る、走る、あなたが好きですって、走って、そして予定調和的に転んでみせたりして・・・・


・・・・マツオカさんってさ 鏡見るときに 絶対自分に見とれているよね みんなそう言ってるよ


・・・ああ、そうだよ そうだよ どうだ わたしの身体を 見ろ 見ろ 傷がいっぱいだろう どう あなたにはこんなことできないでしょう わたしは詩を書いているのよ 詩人なのよ 芸術家なのよ あなたたちと違って・・・ 来年は国家一種を受けて中央官庁に入ろう ところで霞ヶ関って何線の駅だっけな まあいいや 公務員 受かるわ 簡単よ 予備校? 何それ?


・・・・見ろ 見ろ わたしは だれかに ふつうの言葉や文脈でわたしのことを説明されないように きょうも一風変わった歩き方をわざわざ発明して それでやっぱり汚して傷をつくって どう わたし かわいいでしょう 幼くてむじゃきでしょう 愉快でしょう バカでしょう バカな私を 見て! 見て! 見て! 見て! 見て! 見て! 見てったら 見てったら! 見てったら! 見て!


傘の 骨の  ぽろぽろぽろぽろ・・・


・・・・公務員になったら出来ないわったら こんなこと・・・・


・・・・・まだやってたの そんなこと。


◆     ◆


草原も遠く日ぐれて 髑髏の口もすっかり閉じてしまった操車場で 

駅員さんがたくさん出てきて 

骨の傘の骨 拾い集める 


ああ かわいそうに おまえ 

たいへんだったな おまえ 

よしよし 良く休めよ おまえ 


ああ 駅員さんが・・・・骨の傘の骨に 優しく声をかけながら 

お箸でバケツのなかに 骨の傘を収納している


ありがとう やさしいのね あなた


コンテナの蓋を閉めたら もうこれで誰にもわたしの恥ずかしいところを見てもらえないけど 

ああ 駅員さんにもう一声 もっともっと わたしのことをいたわるような言葉を・・・・・ 

書こうかと思ったけど 

まあいいや 

これでおしまいにします。


単語帳を ぱちっと閉じて・・・・・


おしまいにします。


◆       ◆


 こんなに 壊れている わたしを 見て という 最大級の  暴力