駅員観察日記(はてな編)

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殴る、おじ~さんのセレナード

その路線はワンマンだ

なので ホームには安全柵が張り巡らされ 

運転士はそれを見て安全を確認し発車する

 さて、ある平日の昼間

 晴れ晴れとした空気のもと

 駅に停車していたそのワンマン車の扉が

 しゅっと閉まった

 と 思ったら

 その閉まったドアにむかってかけこみ乗車をする元気そうな じいさんが いた

   これは 権利だ!!

    乗せろ 俺を乗せろ 絶対乗せろ

 ・・・顔にそう 書いてある

 彼はそんなふうに幾多の危機を乗り越えてきたのだ

 晴れた日の 元気なじいさん

 定年まで家族のために勤め上げ

 嘱託でさらに勤労し

 子供たちは立派に育ち 孫をなし

 そうさ努力をすれば報われる

 そうさ俺は経済成長に寄与した

 俺は税金をたくさん納めた だから この安全スロープも俺の税金分が少し入っているに違いない 

 俺を乗せろ

 俺を乗せろ

 安全柵と銀色の車体の狭い隙間に入り そのおじいさんは閉まったドアをたたき続ける

 ドン ドン ドン! 

 乗せろ!

 

  ワンマン運転の若い運転士の横顔。

  秋の桜は押し黙る。

  発車するでもなく

  扉を開けるでもなく

  沈黙する

  沈黙する

  乗客も皆 沈黙する。

  日差しが差し込む運転席。

 俺を乗せろ。

 いいじゃないか、一人くらい。

 それが人情ってもんだろ、運転士よ。

 ああ、俺が子供の頃は国鉄運転士は 最後の一人が乗り込むまで発車を待ってくれたものさ そんな人と人とのつながりが 最近の若い鉄道マンにはないんじゃないか 俺はお前のために この銀色の閉まったドアを殴るのさ、女房や息子が間違ったことを言ったときも 俺はこんなふうに殴ってきた あいつらも俺の愛のムチで まっとうに育った ああ 本当はいい奴らなんだ俺の家族は・・・だから あとで理由は話すから いいから 何も 言わず乗せろ 

 乗せろ!

 乗せろ! 

 俺だけ 乗せろ!

   ガン ガン ガン!

  ・・・・ふと 

  その 小柄で筋肉質の じいさんが

  背の高い運転士の胸ぐらをつかんで

  殴ろうとしている

  ・・・ように 見えた

 ・・・運転士は何も言わずに

  すっとドアをひらき

  すっとドアを閉めた

 日時計が少し進んだ 駅で

   つぎは終点 終点です・・・・